課長が私に仕える理由

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 ああ。 ツヤツヤとしたホワイトチョコケーキと、その上に乗ったフランボワーズ。 その後ろにある萌黄色のマカロンは、おそらくピスタチオだろう。 その証拠に、砕いたピスタチオが程良く散らされているじゃないか。 貴婦人のように清楚な見た目通り、味もきっと上品なのだろう。 「……責任というには簡単な気もしますが、 ケーキに免じて、これで手を打ちます」 「ちょっと待て」  私が付属のプラスチックスプーンを手に取ると、 課長がひったくった。 「え、な、なんで?」 「ケーキなんかで責任を取るなんて言うわけないだろ?」  見せるだけ見せて、おあずけ?  泣きそうになりながら、 課長がケーキにスプーンを入れるところを眺める。 わずかな抵抗ののち、ケーキのかけらはスプーンに収まった。
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