課長が私に仕える理由

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 しっかりと味わって飲み下したあとで、 ようやく反論する。 「こ、 これのどこが責任を取ることにつながるんですか!」 「事故で手も足も痛めたんだろ? だから、 俺が君の手足になるんだ。 なんでも言ってくれ」 「そんな、 聞いてな――」 「次はマカロン部分を食べてみようか。 ほら」  太く長い指が、 かわいらしいマカロンをつまむ。 当然のように唇に押し当てられて、 ためらいながらも素直に従った。 「んむ……」  閉じようとしたとき、 唇が指に触れた。 ひんやりとして気持ちいい、 私より固めの肌触り。  不覚にも――課長の指に、 キスしてしまった。 「おいしくて何よりだ」  何事もなかったかのように、 課長が頷く。 そして、 クリームがついた自分の指先をぺろりと舐めた。
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