第三章 Halte die Fahne hoch!(1)

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精鋭の徒歩竜騎兵二個連隊を以て要害ヴァッレン宿を扼する親衛軍中将ヴィルヘルム・フォン・ルフト大将領。 グナイスト男爵ザビーネ・マリアを奉じ六千七百の総勢を以て決起せる『ホーエンローエ軍管区』将領ギルベルト・ヴォルフラム・フォン・ローゼンベルク。 『ホーエンローエ軍管区』に同心を決した『シュポンハイム軍管区』将領アレクサンドル・エーベルハルト・クロプシュトック。 大将領と決起勢とを両天秤にかけ静観を決め込む『アンハルト軍管区』将領ヘルマン・オフターディンゲン。 ロストフ大公国への渡海遠征を目前にして帝室近衛の軍事共同体『国衆(ランツクネヒト)』の将帥らは斯くの如くに分裂し、和睦決裂せる大将領と決起勢は開戦の余儀無きに至ったのである。 後に『ヴァッレンの戦い』と称される戦闘の本質は大将領ヴィルヘルム・フォン・ルフトの拙速なる粛清に対する国衆の抵抗が武力衝突に発展したに過ぎない。 実際、大将領との戦闘が不可避となった時点に於ても国衆将兵の念頭にあるのは大将領の糾弾をはじめとする諸々の要求事項を実現せしめることのみである。 無論、この『ヴァッレンの戦い』が帝国全土を揺るがす一八二〇年動乱の高らかな嚆矢となる事を予期する者は誰一人としてなかった。 第三章 Ende
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