序章 皇帝の旗のもとに

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万歳(Hurra)!!万歳(Hurra)!! 万歳(Hurra)!!万歳(Hurra)!! 伝統の万歳四唱と共に、奔馬の列は馬蹄の音を以て大地を揺るがし飾旗をはためかせた槍を掲げた槍騎兵どもは敵手を蹂躙せんと拍車を掛け掛け迫り来る。 「突撃に備えろ!」 血塗れの貌の中で刃の様に煌めく眼差しを以て屈強なる騎兵を見据えたギルベルトは冬の弦音を思わせる冷たい能声で号令し、従卒が手渡した猟兵銃の引き金を引いた。 馬蹄の轟音の中に鋭い銃声が響く。 螺旋を描いて銃身を滑り出した新式銃の弾丸はギルベルトが狙った指揮官の胸板を射抜き、彼を疾駆する幾百の軍馬の下敷きとせしめた。 敵陣の間近に肉薄しながら、俄かに走った動揺が戦列の勢いを減じしめた隙を叛徒らは見逃さなかった。 「勝利を! 皇帝陛下に勝利を!」 主君への信仰に燃える兵士らは怯んだ敵手に蝗の如く群がり、馬の脛を斬り伏せて、崩れ落ちた騎兵の胸に刺突の雨を浴びせかける。 「散れ、雑兵ども」 号令の傍らギルベルトは奪い取った槍を振り回して敵手を打ち据え、突き刺し、凪ぎ払う。 自ら降らせた血の雨に半ば酔いながら、高貴なる魔将は凄絶なる死の舞踏を演ずる。 舞人が一人また一人と欠けてゆくのを省みもせず、血に飢えた猛獣の性を露に踊り狂うギルベルトの姿は騎兵連隊長ケルンテン大佐の心胆を寒からしめ、続く突撃を渋らしめた。 「将領閣下あっ! 御先に御免つかまつる!」 皇帝ザビーネの到着を冀いながら軍刀を振るい続けた伍長が遂に騎兵の槍に貫かれた。 「万歳!皇帝陛下万歳!」 臣籍に逐われた姫君を敬愛し続けた老中尉は、万歳と叫びながら馬体に撥ね飛ばされ蹄に踏み潰されて事切れた。 「おのれ、奸賊どもめが!」 初陣に興奮しきったロスバッハ子爵は罵声を撒き散らしながら脳天を軍刀で叩き割られ血溜まりに沈んだ。
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