序章 皇帝の旗のもとに

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シルフェンモール村の征討軍右翼は此方へ喰らい付いた。 陛下の御着陣で全ては決する。 ギルベルトは四方に繰り広げられる殺戮を見渡しながらも、遠からぬ勝利の到来を確信していた。 帝室の剣と称えられる軍事共同体『国衆(ランツクネヒト)』随一の名門ヴュステンフォルト伯爵家の若き当主は持ち前の豪胆さを以て浮き足立つ将士を叱咤し来るべき瞬間を待ち望む。 「フォン・ローゼンベルク閣下! 皇帝陛下ご着陣! 陛下率いる別動隊、中将法眼(ちゅうじょうのほうげん)ディートリヒ・ブラウンシュヴァイクの本隊側面に攻め寄せて御座います!」 押し寄せる槍騎兵と死の舞踏を演ずる将領のもとへ、乱戦の只中を潜り抜けた斥候が絶え絶えの息で勝利の報せをもたらした。 誰もが冀求した勝利が今、確かなものとなったのである。
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