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中学一年の春。学校帰りだった。駅前を歩いてたら、三歳ぐらいの女の子が泣きながら歩いてた。
その日は、「エキトピア春の謝恩祭」と銘打って、駅前のお店が特別価格で販売してたり、たこ焼きやお好み焼き、アイスクリームなどの露店が並んでた。
女の子も両親と祭りに来てはぐれたんだろう。
「どうしたの?」
って声をかけてみた。
思ったとおりだった。
「パパママがいない」
ってたどたどしく答えた。
駅前を忙しく歩く人たち。流れに逆らって泣きじゃくる子どもに、だれも注意を払わない。
女の子は、声をかけられてホッとしたみたい。
前より大声で泣き始めた。
「泣かなくていいよ。すぐにお父さん、お母さんに会えるから」
僕は女の子を抱き上げた。
やさしく話しかけてみた。
女の子の知っていそうな歌を歌ったりした。
女の子の涙が止まった。
よかった。嬉しそうに笑い出した。僕と一緒に歌ってくれた。
「すぐにパパママに会えるからね」
とにかく祭の事務局に連れて行くことにした。
僕は女の子を抱いたまま、歩き出した。
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