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「藤堂さん!偶然だね。あの書類、銘尾先生に渡してくれた?」
ふと顔をあげた大木君にそう言われただけで、顔が真っ赤になってきて言葉がすぐに出てこない。
コクコクとぎこちなく頷くのが精一杯だった。
どうしたっ、私。
自分自身にツッコミを入れるが、喉には急に塊が詰まってしまったかのようだ。
「あの…じゃ、また明日。」
やっとのことで絞り出した挨拶を素っ気なく告げると、私はくるりと踵を返した。
「ありがと。じゃあね。」
私の背中越しに妹さんが「誰?彼女?」と聞いている。
「いや、ただのクラスメイト。」と言う大木君の言葉に少し寂しさを感じながら、私は図書館を後にした。
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