2.カイセイの平和なヒトビト

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「ふーん、そっか。綺麗なんだ……」  今まで散々いぶかしげな顔をしてきたのに、綺麗な場所だと聞くと多少は興味がわいたらしい。サンゴが初めて少しだけ興味深そうな顔をした。 (そういえば、遺跡の話をきちんとしたのは初めてかもしれないな)  あまり具体的な話をしたことはなかったのだ。  趣味を公言すると、湖にもぐるという時点で拒否反応を起こされることが多い。  もっと遺跡のいいところを前面に出して語れば、同志も少しは増えたのかもしれない。  現にサンゴは今、アオの持っている防水ライトをじっと見つめている。 (でも何か……何でだろう、今まで誰かに理解してもらうって発想があまりわかなかったんだよな)  この機会に、少しは理解を深めてもらうのもいいかもしれない。サンゴとは気心知れた仲だ。 「今度連れて行こうか? 危なくない方法、きちんと教えるし」 「え、本当?」  サンゴの顔がパッと輝いた。わかりやすい。  サンゴは好奇心旺盛だ。一度興味を持ってしまうと、行動に移したくなる娘なのだ。  一方、ヒスイはうろんな目でアオを見つめる。 「くれぐれもうちの花形ダンサーにケガさせないでよぉ?」 「大丈夫だって、俺はちゃんと安全な場所知ってるから」 「ほ、ん、と、にぃ?」  ヒスイは追及する気満々の様子だったが、慌ただしく皿を片付けて話を切り上げた。  サンゴはすっかりノリ気になっているようだし、何よりも開店の時間が迫っている。  ステージ衣装がわりに店のバックヤードに置いていた帽子とブーツを身に着けた。  小さな店とはいえ、さすがに水にぬれてもいいサンダルでステージに出るのははばかられる。  ただでさえ休日仕様の適当な服を着ているだけに。  慌ててギターを抱えて舞台そでの椅子に座る。  サンゴはさっきまでチキンをもぐもぐと食べていたはずなのに、もうメイクまで完璧に直していて、澄ました顔でステージに立った。 「開店よ!」
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