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ライトを拾って恐る恐る近づいてみると、整然と並んだ楕円形の装置は、壁から伸びているパイプと繋がっていることがわかった。
何の装置かはよくわからないが、どれもヒト一人が横になれるくらいの大きさがある。
床を這う小さなクジラの群れをみている気分だ。若干気味が悪い。
「どういう用途の部屋なんだ?」
部屋中に張り巡らされたパイプと、クジラみたいなフォルムの装置。
壁に沿って歩いてみると、スイッチが無数についた操作盤らしきものがこかしこにある。
どれも初めて見る物で、さっぱり正体がわからない。
(もしかしたら、これはすごい発見じゃないだろうか)
アオは改めてライトで部屋中をくまなく照らして、観察する。
コードを避けるようにして歩き、ぐるりと一周して戻ってきた時。
「うわっ」
足元のパイプにひっかかり、よろめいた。慌てて壁に手をついて、そして。
――カチッ
「……っっ!? 今、何か押して!?」
慌てて飛びのいて、ライトを片手に思わず身構えたが――。
「まぁ、普通に考えたら何もないよな」
何せ、『旧人類』の遺跡だ。遺跡にある機械のほとんどはすでに機能を停止しているものだ。
大半は海に沈んだ時点で壊滅している。
ここのようにかなり良い状態で保存されていたとしても、電力の供給がなければ沈黙するのみだ。
と、思っていたのに。
ヴヴヴヴヴ、と、くぐもった駆動音が響き渡った。間違いなく、この部屋からだ。
「え!? ええぇっ!?」
思わず素っ頓狂な悲鳴を上げたアオは、慌てて出口を確認する。
逃げるべきか。水に飛び込んだとして、通路を通って無事に安全な場所に出ることができるだろうか。
ためらっている内に、どんどん音は大きくなっていく。
『――プ、カイ――、ウ――――カイシ』
聞き取れないくらいかすかに、機械音声が何かを告げる。途端、大地震かというような揺れが部屋を襲った。
「……っ!」
地面がぐらつき、ライトを取り落として、アオはなす術もなく床にはいつくばった。そのままどれくらい、床の上で揺れに耐えていただろうか。
ゴウン、と分厚い鉄板を殴りつけたような音が上から響いてきて、首だけひねって上を確認する。そこで、信じられないものを見た。
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