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「ふーん……」
サンゴが思案気な顔で、やってきた。
そして頑なに嫌がられている例の服をびらっと両手で広げると、首だけでこちらを振り返る。心なしか視線が冷たい。
「うーん、とりあえず状況から判断するけどさぁ」
サンゴがためいきまじりに、呟いた。
「その子の服が必要になった。アオがとりあえず適当に女の子っぽいのを買ってきた。だけど全然好みじゃないのを買ってきちゃったから、その子がすねちゃった」
「正解! すごいなぁ、サンゴ!」
全問正解パーフェクト。
思わずグッと親指を突き立てると、サンゴの視線がツンドラ級に冷え切った。
冷ややかな目がメンタルをえぐり、立てた親指をすみやかに寝かせる。
「もう、正解! じゃないよ、アオ。何でいきなりこの子と一緒にいることになったのかはわかんないけど、正直、この服、センス悪すぎ。かわいくない。ダサい」
猛烈な酷評に、面食らったアオは一歩後退する。
「え……赤とピンクだけど?」
「アオの基準って、赤とピンクなら女の子ぽくてかわいい、てレベルなのね。あっきれた。そんなんだからモテないんだってば」
はぁー、とわざとらしいくらいに深く息をついたサンゴは、泣きつかれてぐずりはじめた女の子の頭を優しく撫でてやる。
「女の子だもん、かわいい服着たいよねぇ。センスのないお兄ちゃんでごめんねぇ」
「サンゴ、結構酷いね!?」
「酷くないです。むしろアオが女心わかってなさすぎてびっくりです。よて亭は女の子多いのにアオはどこ見てんの?」
アオが買ってきた服をぽいと放り捨て、サンゴは女の子と一緒に並んでソファにこしかけると、自分が着ているワンピースの襟元を指で引っ張った。
「アオに質問です。今、私は何色の服を着ていますか?」
「……うん? そりゃ見ればわかるけど、白いワンピースだね?」
「ヒスイ姉さんは普段、何色の服を着てることが多い?」
「あー、あんまり気にしてなかったけど、そういえば水色とか薄いグレーのが多いかな? ……うん、ああ」
そこまで答えて、さすがにアオもサンゴの言わんとしていることを理解した。
赤やピンクの服=かわいいという短絡的な連想ゲームで服を選んだことを責められているのだ。
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