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「赤い服を好んで着ているのはルビィくらいよ? ルビィだってこんな濃い目のピンクの服とか絶対着ないし、全身赤やピンクで固めてるわけでもないし。この色って似合うヒト相当限定されると思うなぁ。そもそも、女性イコール赤やピンクって先入観はどこで仕入れたの?」
「……本当にすみませんでした!」
両手をついて平謝りをしていると、それが面白かったらしくようやく機嫌を直した女の子が笑った。
結果オーライというべきなのか、アオは少し判断に悩む。
「ねぇ、どんな色が好き?」
女の子はきょとんとして、サンゴを見返す。
きょろきょろと辺りを見回した後、アオの髪の色を指差してにこにこと笑った。
「青いのがいい!」
「青が好きなんだ。うーん……。あ、そうだ。よて亭の衣装置き場に余ってるのがあるわ。スカートをワンピースに仕立て直そう! 生地を詰めて肩紐つければいいから簡単よ。裾に白いレースがついているの。きっと気に入るわ」
「ほんと?」
女の子が嬉しそうに笑ってサンゴに抱きつく。サンゴが彼女を抱きしめかえす。
ほのぼのとした光景だ。
正直、この女の子の処遇をどうするか、よて亭の仲間たちに協力を仰ぐにしてもどう説明したものかと考えあぐねていただけに、アオとしては複雑な気分だった。
さっきまでは説明してほしそうにしていたサンゴが、あまりにもあっさりと女の子を受け入れてしまったのが拍子抜けだったのかもしれない。
「聞かないの?」
思わず尋ねてしまう。
サンゴは苦笑いを漏らした。
「それはよて亭まで歩きながらでいいよ。この子、ここにひとりで留守番させるわけにはいかないんじゃないの?」
まさか、今日のところは留守番させるつもりだったとは言えない。
アオもまた、苦笑いをするしかなかった。
まだ何も始まってはいないのだ。
――まだ、何も。
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