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女の子はヒスイの作ったスープを気にいったらしい。
スプーンを握って、ちびちびと食べている。ちなみにおかわりの二杯目だ。
その間に、アオは二人にことの顛末を詳しく説明し直していた。
サンゴに案内できそうな場所を、湖にもぐってさがしていたこと。
崩落して今までにない横穴ができていたこと。
そこを調べてみたら『旧人類』の遺跡がほぼ完全な形で残っている部屋に行き当たったこと。
そして、誤って遺跡の機械を作動させた後に、この女の子が現れたこと。
「んんっ、それじゃあこの子、遺跡に迷い込んでたってことじゃなくて、最初から遺跡にいたってことなの?」
「少なくとも、俺があの部屋を見つけた時は誰もいなかった。暗かったけど様子は確認していたし、あのクジラみたいな形の機械も、少なくとも俺が何かの装置を起動させるまで一切動きがなかったよ」
この女の子を連れ出すのは大変だった。
水に潜って連れ帰ろうとしたら、ぶくぶく泡を噴くし。泣かれるし。
仕方なく背負って脱出用のはしごをのぼろうとしたら、アオの機械の身体+女の子の身体の重みで、劣化していた踏桟を踏み抜いて落ちるし。泣かれるし。
とはいっても、はしご以外に連れ出す方法も思いつかず、結局はしごが壊れる前に上りきるというチキンレースをする羽目になった。
冷静に考えると相当危なかった。
機械の身体だって、急に強いダメージをうければ死ぬことがあるというのに。
(ましてやこの子……機械じゃない、っぽいし)
そして、それこそが最大の問題点なのだった。
「俺、この子が『旧人類』の生き残りなんじゃないかって思ってて」
「アオ、いくら遺跡が好きだからって夢見すぎ」
サンゴは苦笑いで「ないない」と手を振る。
しかし、アオだって何も考えずにロマンだけでこんなことを言っているわけじゃない。
「そうはいうけどさ、サンゴ……この子、充電コネクタもないし、お腹はなるし、すぐに目から水をだすし、髪の毛は黒っぽいし、おまけに見た目も中身も子供だし……むしろヒトっぽい要素の方が少なくない?」
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