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「あー、そうみたいだな」
「他人事みたいに言わないで!」
彼女、サンゴはバタン、と大きな音を立てて窓を閉める。ほどなくして彼女はこの庭まで飛び出してきた。
「どうするの!? 戻ってこないんだよ!? 今ならまだ止められるかもしれないでしょ!?」
サンゴは立ち尽くしたまま動かない自分のシャツを、もどかしそうにぐいぐいと引っ張る。
「本人が決めたことだ、仕方がない。それに、ヒスイ姉さんが引き止めなかったのに俺が止めるわけにもいかない」
「えっ、止めなかったの?」
シャツを引く、サンゴの手が離れて。
「殴りはしたらしいけど」
「ああ、うん、ヒスイ姉さんならそりゃ殴るよね」
彼女は長い鮮やかなピンクの髪をくしゃくしゃと指でかき混ぜながら、その場にへなへなと座り込む。
「……ねぇ、アオ、私達『ヒト』はその気になれば永遠に近い時を生きられるのに、どうしてギンは『天国』に行っちゃったのかなぁ」
「それは哲学的命題だな」
わかる日がくるかもしれないと、彼――ギンは言ったけれど。
わかってほしいとは、思っていないようにも見えた。
――何せこの世界は『天国』から遠すぎるのだ。
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