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父さんはうなずいて、小さく首をひねる。なにか、考えているようだった。
「……おかしいといえば。うちの畑をエサ場にしているカラスたちが、ちょっとね」
と、大げさに首をかたむけた。
ひょっとすると、父さんは話題をかえようとしたのかもしれない。
だけど。
「カ、カラス?」
ぼくは、みょうにおちつかなくなった。
「カラスがどうかしたの?」
「急にいなくなったんだ。くらくなってきていたけど、見わたすかぎり、かげもかたちもないなんてね」
「そう、なんだ」
まさか、と思いつつも、耳のおくにしみついた声があった。
『あいつらか。かんしゃくどっかん』
ぼくは思い出していた。
男の子の顔。すがたをけす前に見せた、あの顔。顔つきを。
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