密室

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 気がついたとき、私は部屋の中にいた。  何の変哲もない部屋。  この部屋をどう表現すればいいのか……  モデルルームのリビング?  そう。その表現が多分妥当だ。  ローテーブルとソファ。  壁際にはAVボードの上に大型の液晶テレビが設置されており、大きな窓の側には観葉植物。  たしか、パキラとかいうヤツじゃなかったかな?  フローリングの床。  シミひとつ無い白い壁は、壁紙ではなく、壁自体がそういう色の素材らしい。まるで白磁のような質感だ。  部屋を見回せば、数人の男女。  女が二人、男が二人……いや、男は私を入れて三人か。  雑魚寝と言うにはあまりにも無造作に、この広いリビングに寝転がっている。  私は彼らを見たことが無いと思う。  部屋の造りやそこらに転がっている男女を見ると、 とても現実離れをしているような、そんな気がする。  私は、夢を見ているのだろうか?  それから間もなくして、寝ていた人たちが次々と起きてくる。  互いに顔を見合わせたり、部屋の様子を見回したりしているが、皆一様に何が起きているのかサッパリ理解していないような表情をしていた。  不意に、テレビが点いた。  画面にはトムとジェリーが流れている。 『おはよう諸君』  テレビから男の声がした。  映像はトムとジェリーのままだ。 『君たちは自分たちに何が起こったのか、ココがどこなのか、同じ部屋にいるのが誰なのか、これからどうなるのか、全く分からないだろう。残念ながら、君たちの質問に答えるようなことを私はしない。ただ、君たちは法に触れる事の無い重大な罪を犯した者たちだということは言える。法的には極めて善良な一般市民であるにも関わらず、人間として、生物として重大な罪を犯した者たちがここに居るというわけだ』 「それで……」 男の一人が不機嫌そうに声を出す。 「なんなんだよ一体。ココで何をさせようっていうんだよ」  バカなことを言う。  どうせこんなのは、録画したものを流しているだけなんだから、一々質問したって何の意味も無い。 無駄なことを一々する奴だとおもった。 『別に。君たちに何かをしてもらおうとは思ってはいない。そこは君たちのための監獄であり、処刑場だと、そう思っていただきたい』  私の予想に反して、テレビのスピーカーからは質問に対する答えが返ってきた。
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