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影が小さくなる頃には考えがまとまったので、感傷に浸りながらどこにお墓を作ろうかとしばらく悩んだ。ほどなくしていつも鎖で繋がれていて連れていくことの出来なかった、僕のお気に入りの場所にしようと決めた。家からは少し離れている山の中だが、僕が知っている場所なら後で困ることもないだろう。滅入っていた気持ちを切り替え、僕は彼と共に家を出た。道すがら僕は枯れ枝のように軽い彼の亡骸を背負いながらさんざん泣いた、彼をこんな目にあわせた両親を許すなんて無理だった。でも、所詮は非力な子供なのだ。他人に頼るしかない。
僕は帰り道、警察に寄った。人がいない事を確認して、彼の切り取られた手を置いていった。遠い道草だった。数日して両親に逮捕状が来た、容疑は殺人だった。灯りが消え、静まりかえった家の前で僕は
「こころ兄さんは殺されないと人として扱われないのか……」
と、笑いながら呟いた。
今でもあの判断が正しかったのかはわからない。しかし、これだけは言える。兄さんを忘れないことが僕のできるせめてもの贖罪だ。
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