鎖家の犬

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 僕が生まれる前から、うちでは何匹かペットを飼っていた。敷地の外に出してもらえない僕にとって彼らはちょうどよい遊び相手であった。僕はコロと遊ぶのが好きだった。彼は僕が生まれる前からいるので、まあ僕にとっては兄にあたる。だから両親がいないところでは違う呼び方をしたし、正直コロと呼ぶのはあまり好きではなかった。  うちの庭には何棟か小屋があってそのうちの1つが彼の小屋だった。彼はいつだって一緒に遊ぶと喜んでくれるし、どこか僕の言葉を理解しているような気さえした。実際、分かっていたんだと思う。  けれど両親の態度は違った、僕が一緒に遊んでいるところを見ると、ものすごい剣幕で怒った。僕は怒られるだけで済んだが、彼はただでさえ食事をほとんどもらっておらず弱っているのに、棒で何度も殴られた。後で知ったことだが、いつも静かなのは喉を殴り潰されていたからだった。右肩から先がないのは生まれつきらしい。まあそんなわけで僕らは親のいない時を見計らって遊ぶしかなかった。  ある日、いつものように両親が出かけた隙に遊んでいると彼は、片方しかない手を使って器用に花の絵を描きはじめた、僕は驚いた。そんなことができるなんて知らなかったし、何よりとても上手いのだ。そういえば前から賢いと思う節はいくつもあった、僕が語りかけると時々相槌を打つかのように頷くし、彼を思いやることを言った時なんかは涙を流すことさえあった。こんなにも賢く、表現豊かな彼をただの遊び相手として見るなんて僕にはもうできなかった。何とかして彼を今の状況から助けてやりたかった。そして考えあぐねた結果、誰かに相談することにした。
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