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「……新年度から、いきなりですか?」
「ここまでで何か質問があれば」と言われ発言すると、専務が不満そうに鼻を鳴らした。
「ん? 麻木君。何か不安があるのか?」
「いえ。あまりに急だなと感じたもので……」
専務の隣に座っている部長が口を開く。
「うん。まぁ、そうかもしれないなぁ。しかし、悠長に構えてる暇はない。計画より早く準備が整ったのだから、早く取り掛かった方がいいだろう。大きな経費削減に繋がるのだから」
「そうですね。……ですが、いきなり全てを移行するのはやはり、私は危険だと思います。何事も初めはトラブルがあるものです。新規参入を悪く言うつもりはありませんが」
「うむ。確かに」
「なので、最初は二割ないし、三割からのスタートで如何でしょうか? 現在のお客様の信頼を損なわず、スムーズに他会社へ委託するにはやはり移行期間は必要かと思います」
「ふむふむ」
「新しい運送会社が問題なく機能しているか、クレームが発生しないか、またクレームやトラブルが起こった時のマニュアルは完璧か。それを見極めた上で、全商品を任せる形が一番安全だと思うのですが」
部長は大きく頷いて、タポタポした顎をウインナーみたいに丸々とした指で掴んだ。
「まぁ、確かに麻木君の言うことも一理あるな。白猫より運賃が安いのは魅力だが、付き合ってみない事には性格は分からない」
隣の専務にわかり易い日本語で俺の言葉を翻訳する部長。
「うむ。……移行期間にどれくらい必要だと思う?」
専務は鋭い目つきで俺を見据えると、ボールペンを持ち直した。
「半年後を目標にしては如何でしょうか? 九月、下期から全面スタートを目標に」
「ふむ。半年ね。分かった。麻木君の意見を一度持ち帰って検討してみよう」
「ありがとうございます。よろしくお願い致します」
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