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「本当に……いいの?」 「うんうん。狭いけど、上がってくらさいよ~」 「お邪魔します。お……」 「ん?」 「あ、ううん」  屋台のおでん代を俺が払うと、静谷君は「いいんですか? ご馳走様れす」とヘコヘコと頭を下げた。そして「お礼に飲み直ししましょう」とアパートへ招待されてしまった。  これまた偶然だったのだけれど、静谷君と俺は同じ駅を利用していた事も判明。電車の方向は違うのだけれど、住んでいる地域は同じだったのだ。 それに白猫とうちの会社では始業時間も違う。今まで駅で見掛けなかったのは当たり前かもしれない。 「もっと話したいじゃないれすか。せっかく会えたんだし。でもあそこはもう寒くて……」 「あははは。長居はできないね」 「どぞ、あ、このスリッパ。新品なんで使って下さい」 「ありがとう」  スリッパに足を入れて奥を見る。独身男性の一人暮らしだというのに、とても綺麗だ。ゴミ袋や空のペットボトルすらない。 「エアコン点けてと……狭くてごめんなさい。でも、直ぐにあったかくなりますから」 「あははは。そうだね」  通されたワンルームもゆったりとくつろげる空間になっていた。草色の大きなソファを見て「やっぱり」と思う。 「麻木さん、コートと上着掛けますよお」 「あ、うん。ありがとう」 「座ってて下さいねぇ」  静谷君はコートをハンガーに掛けて入口の横にある作り付けのクローゼットへしまうと、俺のコートも上着もクローゼットへしまってしまう。チラッと見えたクローゼットはガランとしていた。  あんまり物を溜め込むタイプではないのかもしれない。
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