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「声も好きだし、話し方も好きだった。いつも時間にピッタリなのも。トラブルの時も、感情的に上から物を言われる事、一度もなかった。……いい人だな。仕事出来る人だな。かっこいいなって、ずっと思ってたんれす」
「あは……面と向かってそんな褒められると、照れちゃうな」
妙に恥ずかしい。ドキドキしているのを、頭を掻くフリをして笑って誤魔化した。
くすぐった過ぎるだろ。言ってる本人が恥ずかしがってないのに。
「ずっと、どんな人なんだろう。って……思ってました。だから会えてとても嬉しいです」
「あ、あは。俺も嬉しいよ?」
頭の中に過ぎった言葉、「次は、約束して飲みに行こうよ」が言えなかった。
一ヶ月後、静谷君はショックを受けるに違いない。こんなに会えた事を喜んでくれているのに。目の前の、点いていないテレビを見ながら考えていると、コツンと肩に感触。
……え?
横目で見ると、静谷君は俺に体を向けたまま、甘えるように右肩に顔を埋めていた。
好き。って……まさか……そういう意味?
固まってしまう俺。喉が急にカラカラになる。右手に持っていたビールを左手に持ち替えてゴクゴク飲んだ。動かない静谷君。
あ、もしかして……飲みすぎて寝ちゃったのかもしれない。そうだ。きっとそうに違いない。電車の中の酔っ払いのサラリーマンと同じだ。
そっちの発想が真っ先に来なかった自分に呆れつつ、ホッと胸を撫で下ろす。
ちょっとだけ寝かせてあげよう。それで起きなかったら肩を揺すって起こしてあげればいい。そういえば、さっきも急に涙ぐんでいたし。きっと会社で嫌なことでもあったんだろう。
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