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「……麻木さん、お願いがあります」 「な、なに?」  眠ってしまったと思っていた静谷君に話しかけられて、またドキッとする。  静谷君は肩に顔を埋めたまま、ボソッと言った。 「一人でいたくないんです。寂しくてどうしようもないんです。一緒に……寝てくれませんか?」  頭が真っ白になった。  それって、それって……やっぱり、そういう意味? 「あの、しず、静谷君……、俺、俺はそっちの人間じゃないんだ……その……だから、えっと……添い寝? 添い寝ぐらいなら出来るけど……」  静谷君はゆっくりと頭を上げて、斜めになった上半身を起こした。  トロンとした目で俺を見てる。やっぱり眠っていたのかも?  眠そうな表情のまま、静谷君はフワッと微笑んだ。 「うん。僕も……そっち系じゃないです。添い寝してくれます?」 「う、うん……」 「やっぱり麻木さん好き」  静谷君はソファから重そうに立ち上がり、部屋の明かりを落とした。天井にあった四つのダウンライトが淡いオレンジ色のボールになる。ぼんやりと見える静谷君は俺の手から缶ビールを取ると、ふらぁと部屋から出て行ってしまった。  どうなってるんだ。これは、いったい。え……本当に添い寝するの?   戻ってきた静谷君の手には歯ブラシが握られていた。「新品あったから良かった」と言って俺に渡す。歯ブラシには歯磨き粉もしっかり乗っている。 「あ、ありがと……」  受け取った歯ブラシを口に突っ込みながら立ち上がる。そのままハミガキを開始すると、静谷君は楽しそうに「ふふふ」と笑って、俺の背中を押した。部屋を一緒に出て、洗面台へ。  そこもやっぱりピカピカだった。
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