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「三年か~……」 「あは。うんうん。今まで会わなかったのが不思議ですね」 「三年前って……うん、俺が一番落ち込んでいた時だな」 「そう、なんですか?」  静谷君がまた例の上目遣いで見てきた。  ワンコロみたいだな。それ。 「うん。真剣に悩んでいたなぁ。いつの間にか復活していたけど、きっと静谷君のお陰だね」 「え? え? 僕ですか?」  また目を真ん丸にして背筋を伸ばす。 「うん。毎日、朝昼晩に加えて三時のおやつに静谷君の声を聞いていたから、知らない間に元気を貰っていたのかもしれない」 「え……それは、違いますよ。僕こそ、麻木さんに元気貰ってました。麻木さんがシャキシャキしてるから、僕も頑張ろうって」  静谷君は首をプルプルと横に振って……また顔を赤くした。  モーニングを食べて、駅までの道を二人で散歩がてら歩いた。静谷君は駅裏に、俺は駅前に住んでいたから、中間地点まで送ると静谷君が譲らなかった。 「コーヒーご馳走様でした」 「こちらこそ。色々ありがとうございました」  静谷君は深く頭を下げた。  ゆっくり頭を上げる静谷君。俺は静谷君の目を見て手を差し出した。 「次は、日を決めて飲みに行こう」  まだ外部に知らせるタイミングではない。でもそんなの知ったこっちゃない。会社の下した決定を静谷君には事前にちゃんと知らせておこうと思った。 「……はい」  静谷君は俺の手を見て、そっと手を重ねてきた。その手をギュッと握ってブンブンと握手をした。握った手は小さくてプニプニと柔らかく、しっとりしていた。 「麻木さん、手、痛いっす」 「あははは。ごめん。じゃ、また! 月曜日に!」 「はい」  静谷君は苦笑い気味に微笑んだ。顔の横でそっと手を振る。線路を渡り振り向くと、静谷君はまだこちらを見ていた。  俺は手を上げた。  静谷君は微笑んだように見えた。
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