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 高速で約一時間。車を走らせて到着した場所は、東京とはまったく違うのどかな風景が広がる、自然がいっぱいの地域だった。 ……どうしよう。  目的地が近づくにつれ、自分が緊張していくのが分かる。  いきなり会いに行ったら、引かれるのではないか。もしかして、気持ち悪がるかもしれない。そもそも、どうして俺は慌てて、ここまで走ってきたのだろう。  考えれば考える程、自分がおかしな事をしている様な気がしてきた。 「目的地に近づきました。運転お疲れ様でした」  ナビの労いの言葉に頷く。でも、途方に暮れてしまった。  何も理由がないのに、突然会いに行くのはやっぱり変だよな……。……理由。  大家さんに嘘八百の御託を並べた事を思い出した。  ああ、そうだ。俺はまだ会社の決定事項を彼に伝えてない。それだけでも立派な理由になるよね。そう思うのに、なかなか車から降りる事が出来ない。グズグズ考えているうちに、どんどん外が薄暗くなっていく。  どうしよう。どうしよう。  ハンドルに腕を乗せボーッと目的地である建物を見ていると、突然窓をコンコンと叩く音。ビックリして振り向くと、窓ガラス越しにこちらを覗いていたのは静谷君だった。 「やっぱり……麻木さん?」  目を真ん丸にしてポカンとした顔に、「ち、違うんだ!」と、悲鳴を上げそうになった。
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