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きっと静谷君も、父親の才能を引き継いでいたと思う。でも両親が彼の兄しか眼中になかったから、彼は「平凡な弟」という殻を被っていたのではないだろうか。いや演じていたと言うべきか。
静谷君の能力。
場の空気や、周りの人間の気持ちを読み、望まれたように無意識に動く。老若男女、誰とでも仲良くなれるし、どんな権威のある人間だろうと、会社の重役だろうと、なんなく懐に入っていける。
多分、静谷君には嫌いな人も、苦手な人もいない。
彼自身はそんな自分の能力を特殊なものだと思っていないだろう。
静谷君の役割は、つまらないものを作り、兄と比較して、やはり兄は非凡だと親を喜ばせること。幼い頃から彼は親を喜ばせる術を分かっていた。そして、自信と才能に溢れた兄を心から尊敬もしていたのだろう。
才能を気づかせるのも、伸ばすのも、環境だと痛烈に思った。
子供にとっての最大の環境は「親」だ。
もし、両親が静谷君の作った物に関心を持ち、認めて、温かい言葉を掛けていたら……また道は違ったものになっていただろうと思う。
そう思うと、目の前の静谷君が幼い男の子に見えてくる。
だから思わず、頭を撫でるなんて事をしてしまったのだろう。
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