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「静谷さん、三番に丸沢物産の麻木さんです」
「はぁい」
壁の時計をチラッと見上げる。午後一時ジャスト。本当に時間にキッチリしている人だ。時間だけじゃなく、仕事においてはすべてキッチリ、キッカリしているんだろうな。
首と肩で受話器を挟み、点滅している三番をポンと押しながらパソコンのページ画面を「丸沢物産」に変える。
「お待たせしました。白猫急行の静谷です」
「ご苦労様」
「麻木さん、お疲れ様です。いつもお世話になっております。大丈夫ですか? 声に元気がありませんよ?」
いつも本題に入る前に他愛もない会話をするのが俺流。
今日の麻木さんの声は、いつもより若干張りがなかったから眠いのかと思って言ってみた。
「……ん? そうか?」
「ふふふ。食事して眠い時間帯ですよね」
「あ~。そうだな。確かに……今日は食べ過ぎたかもしれない」
「麻木さんていつもお元気だし、バリバリ働いて、バリバリ食べる印象あります」
「あははは。確かに……そうかも」
ちょっと低くて落ち着いた声も好きだ。耳が心地いい。
「眠いと言っても、今日も一時ジャストですもんね。頭が下がります」
「一時ジャスト?」
キョトンとした声。僕は表情を想像して笑いを堪えた。
「そうですよ。あれ? 知りませんでした? 麻木さんが僕に電話を下さるのはいつも一時ジャストです」
「へ~……そうだったかな? まぁ、一時なら休憩も終わってるかな? とは思ってはいたけど」
「んふふ。その通りです。麻木さんのお陰で午後からも頑張るぞっていつも思いますもん」
「え? ははは。そりゃ良かった。じゃ、三時の集荷をお願いするよ」
「ありがとうございます。どうぞ」
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