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「ふーっ」
一時間の残業をこなし、地下鉄を乗り継ぎ、七時に家に着く。
1Kのアパートは狭いけど、僕の城。やっと帰ってきた。とちょっとワクワクする。なぜワクワクするって? それは僕がこだわって、こだわって、考え抜いて作った部屋だから。
まず玄関開けるよね。もちろんそこには靴箱があるのだけど、まずそこから違う。
迎えるのは抜群の収納力を誇る万能棚。縦二メートルもあるから、耐震の突っ張り棒もかましてある。色は清潔感あふれる白。両開きの右の扉は全面鏡。この鏡が狭い玄関を広く明るく見せる。身だしなみチェックはあんまりしないかな。したって、どうせ家を出なきゃいけない時間だしね。
最低限だけど、ネクタイが歪んでないかチェックして上着のホコリを払うくらい。ビシッと背筋を伸ばし鏡の自分に「うん」と頷いて、毎朝部屋を出る。
んで、鏡がついた右側のドアを開けると仕切りがない。上部にハンガーを掛ける棒が一本あるだけ。ふふ。そう。これ本当はクローゼットなんだよね。本来ならここにはコートとかワイシャツを掛ける。そのスペースに傘を引っ掛け、常温で長期保存できる水が1ケースしまってある。非常食や懐中電灯なんかもここ。
左側は真ん中に飾り棚がある。女子じゃないから花も置かないし、いつもアパートのキーを置くだけ。あとは郵便物とか?
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