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誰の気持ちも考えないで、我儘を言ってしまった自分。笠井旅館の跡取りと比べると雲泥の差、いや、ライオンとミドリムシくらいの差がありそうだ。
（彼女、どう思ったかな）
水川雅紀がどんな顔をしていたか、思い出せない。
それに、
（田口さんは、就職先に口をきいてくれる人でもある）
情けない態度ばかり見せるわけにはいかない。狭い町だ。ダメなやつが移住してきたと噂になるのも早いだろう。
それじゃだめだ。
僕は変わるために、家を出てきたのだから。
湯からあがると、バスタオルで体を拭くのもそこそこに、田口さんの携帯にメールを打った。
『シェアハウス、やってみます』
スマホの画面が蒸気でくもってフリップしにくい。短文になってしまったが、思い切って送信した。
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