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◇
「いやあ、よかった!」
僕をシェアハウスまで送り届けた田口さんは、終始機嫌がよかった。温泉で調達したらしいプリンを玄関先で僕に手渡し、
「二人で食べてください」
と、満面の笑みを浮かべて帰って行った。
水川雅紀は職場の顔合わせ、だそうで、僕は合鍵を使って中に入る。
第一印象は、明るい、だった。玄関横の出窓、天窓や小窓、小さな鏡などが冬の弱い光をうまく捉えているらしい。
ほっとして、靴を脱ぐ。左側にトイレ。廊下の奥にリビング、ダイニング、キッチンがある。風呂場はキッチンの奥らしい。
飴色にかがやく手すりのついた階段が2階へ通じている。
女性が2階、男性が1階がいいのでは、と田口さんが話していたので、ダイニングの手前にあるドアを開けた。
4畳半ほどの洋室。広くはないけれど、大きな窓がある。今は雪に半分埋まっているけれど、ウッドデッキになっているらしく、夏は外に出られるようだ。
小さなクローゼットと低いベッドがあった。布団はないから今日中に買わなくてはいけない。
プリンを持って、キッチンへ行く。冷蔵庫と電子レンジはあるけれど、炊飯器はない。フライパン、鍋などの調理器具は揃っている。洗剤は、真新しいものが封を切られていて、雅紀が昨日使ったらしかった。
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