1、卵色の家

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 マジで住むところがなくなる。スマホはあきらめて、火元へと急ぐ。こけつまろびつ、家の裏側へ回り込むと、 「おかえりー」  パチパチと火のはぜる音と共に、呑気な声が帰ってきた。  スッと立っていたのは水川雅紀。  その奥に、レンガで作られた丸っこい暖炉……いや、かまどというのだろうか。そこから伸びる煙突から、黒々と吐き出される煙が、僕の見たものの正体だった。 「え、なに、これ」 「かまどー」  もさもさと降りしきる雪を物ともせず、雅紀は軍手でカマドの鉄扉を開けた。  勢いよく、赤と黄色の炎の舌が揺らめいている。 「ごはん作ろうと思って。もしや、火事かと思った?」  もしや、もしやー、とニヤニヤ笑う。清冽な印象が氷解した。  想像していたよりも、フランクで変な女。 「な、なんで外? 中にガスコンロ、あった、と思うんですけど」  地獄のようにゴウゴウ燃える火で、何を調理しようというのだ。 「ガスねえ、届いてないっぽくて」 「ガスって届くとか、そういうもんなの?」 「ほら、あそこ。あそこにないでしょ、プロパンの……缶? っていうの?」  卵色の外壁に取り付けられた、高さ130㎝ほどの縦長のブリキ箱を差す。     
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