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プロパンガスって、あれか。田舎を舞台にした映画とかで、家の外についてる銀色の。
「ガスボンベ」
「それそれー。なんか、前の人たち使ってなかったんだって。このかまどか、電気だったんだって」
くすんだ黄色をしげしげと眺める。変わり者に縁のある家なのだろうか。
「私は電気、最低限しか使いたくないから、昼はこれでいいかなーって」
いやいや、調理場所が寒すぎだろ。
「何、作ってんの」
「今、火力調節中」
「そもそも、薪とかあったの」
「それは、残ってた」
ガスを残して欲しかった。
ガスを残して欲しかったです、大家さん。
「あ、自己紹介、忘れてました」
火掻き棒を、ひゅうっと中空に振りながら、雅紀が言った。
「そちらから、どうぞ」
と手を差し出す。忘れてたと言いながら、相手から自己紹介させるのか。
ほんと、変わってる。
「森永、翼です、す、好きな食べ」
「水川雅紀です」
よろしく、と言う彼女の背中に、ぶくぶくと言葉が溢れ返る。
自己紹介って、名前だけじゃなく、いろいろ言うものなのでは。
ていうか、僕が好きな食べ物とか言いかけたのに、かぶせて自分の名前、言うか、普通。
なんか、興味ないみたいで嫌でしょ、そういう態度。
ねえ。
ねえ。
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