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運転していただけなのに、ドキドキと鼓動が鳴り、呼吸が浅くなる。
「どこに……行っちゃったんだよ」
恐る恐るスマホを取り出し、何か連絡がないか確認した。
新着マークのあるアイコンを片端から開けてみる。
ニュースやゲームの新着まで。
雅紀からは何も届いてない。
「あーもう」
ワイパーの音が、情けない声をかき消す。
うなだれて、ハンドルにだらりと腕を預け、どうすればいいか考えた。
帰ってただ待つしかないんだろうか?
その時、携帯の画面が淡く光った。
ユリアからのメッセージだった。
《水川さんと、仲直りできた?》
藁にもすがる思いで返信する。
《帰宅が遅いから、湿原センターに来たんだけど、すれ違ったみたい》
一瞬の間をおいて、ユリアから電話がかかってきた。
「水川さん、まだ、帰ってないの?」
「ま、まだ、だと思う。す、すれ違ったのかもしれないけど」
「ひとまず、翼くんも帰って待った方がいいわ。こんな吹雪じゃ危ないよ」
「う、うん。わかってる、で、でも」
「彼女の方が、吹雪の怖さ知ってると思うし」
確かに野外活動の経験は彼女の方が上だ。それはそうだけど。
「い、一応確かめたいんだ、ゆ、ユリア。お願いがある」
「なに?」
「雅紀が見回っている風車の場所、教えて」
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