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そこへ内線が鳴った。
「森永さま、お食事、どうします?」
前置きも何もなく、尋ねられた。よく通る若い男の声だ。明るく、まるで朝日の光線を思わせる。
「あ、えと……どう、って」
明るさに戸惑って、また言葉が出ない。
「食堂でお召し上がりでいいですか? もう準備はできてるんですけど」
床の間に置かれた小さなデジタル時計を見る。18時半。
夕食という言葉に反応したのか、くうーっと腹が鳴った。
「い、行きます」
階下へ降りると、素朴ながら洒落たクロスのかかったテーブルに、新鮮な魚介の小鉢が並んでいる。
「森永さま」
どうぞ、と声をかけてくれたのは、すらりと背の高い、優しそうな顔つきの青年だった。つぶらなのに、キリっとした瞳がラッコに似ている。
「恋幌町に、移住されるんですってね。笠井旅館の4代目の康臣です。観光協会だとか、イベントによく参加してますんで。宜しくお願いします」
鍋用の固形燃料に火をつけながら、にこにこと僕に話しかける。
「困ったことがあったら、ここに電話してください。いろいろ不便もありますから」
と、箸袋に書いてある旅館の電話番号を指した。
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