マイペースな彼女

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マイペースな彼女

冷え込む風に飽き、僕は窓を閉めた。ベットに寝転んで、再び彼女のことを思い出す。僕は今でも、彼女のことを忘れていない。 本人が嫌がる栗色の髪は、太陽に照らされるとキラキラと綺麗で、触るとさらりと手から落ちて離れていく。それが気持ちよく、調子にのって何回も繰り返すと彼女はやめてとたしなめる。満足したような、愛しいがこぼれた笑みだった。そんな顔で彼女は笑うもんだから、僕はおどけついでにまた彼女の髪で遊ぶのだ。 その時は僕も彼女と同じ顔をしていた。 マイペースな彼女はいつも時間通りにはやってこない。だからといって彼女は天然ボケの、のほほんなんかではなく、ふんわりでもなく、やんわりでもなく、どこか凛としたものをもっている女性であった。他人に左右されない、しなやかな女性であった。そんな彼女をたまに恨めしく感じる僕であるが、そこが愛しいと感じるのも僕であった。 彼女は酷い甘党で、いつだったか僕に甘ったるいという味覚を菓子で感じたことがないと話してきた。どういう感覚なの? といたって真面目に聞いてくるもんだから、面倒臭いと思いつつ僕は吐き気がしてしょっぱいもんや辛いもんが非常に食べたくなるんだと、うえぇと吐く振りをして教えたものだ。
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