1、

5/11
前へ
/11ページ
次へ
 私は毛を逆立てた。 「どうして、急に。私は今の生活が気に入っているし、花も、人間社会は面白いって言ってたじゃん」  何を言ってもだめだった。入れ替わり契約は、両人・猫の合意がなければ続けられないものらしい。あっという間に、私は人間の体に戻った。 「もう会社なんて行きたくない」  五本の指がある両手で、つるつるした毛のない顔を覆った。  花は、野良に戻してほしいと言うので、抱えて外へと向かう。そっと放すと、ぐんと伸びをする。 「会社へ行ってごらんなさい。人間でも、猫のように自由に愛され生きることも出来るのよ」  花はそう言うと、塀の上にジャンプをして、ゆうゆうと歩いて行ってしまった
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加