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落下の危険に怯えながら、自撮りのポーズを撮る。 崖に生えた私と茸。 完璧な一枚を納めなければならない。 ここで妥協したら、こんなところまで来た意味がない。 最高の写真が撮れた。私はその出来に満足した。早く会社の連中に送りつけてやりたいが、生憎ここは断崖絶壁だ。スマートフォンの電波表示は、さすがに圏外となっている。 私は岩肌から引きはがし、懐にしまった。 会社で料理して、皆に振舞おう。 一刻もはやく戻りたい。 私はロープに手を伸ばした。 ....あれ? 届かない。 ロープの先端が風に揺れている。 私が手を伸ばした指先の、ほんの30cmほど先で。 額を、冷たい汗が流れ落ちていった。
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