山小屋の主人

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山小屋の主人

想定以上の悪路だった。購入して15年目のワゴンRには少し荷が重いかもしれない。4WDとはいえ、所詮は軽自動車だ。こんな悪路を走行するようには設計されていない。 私はディーラーの、1年点検のお勧めを拒絶したことを後悔していた。こんなことになるなら、オイルも変えておけばよかった。タイヤだって、もっといいものを装着しておくべきだった。でも、今はそんなことを考えている場合じゃない。とにかく前に進むのだ。 穴ぼこだらけのアスファルトを乗り越え、どうやら<山小屋>までたどり着くことができた。ここに住む男が、茸について詳しいことを知っているらしい。なんとかして連絡を試みたが、結局、実際に会うよりほかに方法がなかった。男はE-mailはおろか、携帯電話すら持っていない。 山小屋のドアにはインターフォンもない。男は、招かれざる客をどこまでも拒絶しているようだ。だが、簡単にあきらめるわけにはいかない。なんとしても茸の情報を得なければ。 「ごめんください」 私はドアを粘り強くノックし続けた。確かに小屋には人の住む気配があった。長い間ライターという仕事をしていると、そのような感覚が異常に鋭くなる。私の勘は外れたことがない。
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