山小屋の主人

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ついに目的地に辿り着いた。 「茸はX山の断崖絶壁に生えている」 あやふやな情報を頼りに、グーグルアースでそれらしき場所を探した。そうしてあたりをつけたポイントが3つ。そのうちのひとつは、山に実際に来てみて、到底登れない場所にあることがわかった。今いるのは、<ポイント2>だ。 <ポイント3>に向かう体力は残っていない。私はこの場所でキャンプを張る覚悟を決めた。 リュックを下ろし、野営の準備をする。ワンタッチテントを立て、四隅を固定した。便利になったものだ。私が山岳部だったころは、テントを立てるだけで、慣れているものでも1時間はかかった。 テントは絶壁の頂上に立っている。崖の傾斜はほぼ90度。装備なしに降りていける場所ではない。 私は目を細め、崖の斜面に生えているはずの茸を探した。50mほど先にそれらしきものが見える気がする。あまりに遠すぎて確証は持てない。 その周辺には、人がなんとか立てる程度の足場が確認できた。 あそこまで行けば、とりあえずは足を休めることができるだろう。 私はロープの一端を、崖付近に生えた樹木に固定し、ロープを頼りに崖を降りていった。
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