9人が本棚に入れています
本棚に追加
和子はピクピク動く、血の気のない白い顔を俺に向けたまま、
「殺れるものならあ・・殺ってみなあーー」
細い首をグラグラさせて抑揚なく喋った。俺を見ていた目は、今はもう完全に逝っている。
「さああ・・殺ってみろ」「さああ・・早くしなあーー」
グラグラ揺れる首は今にもポトッと落ちそうだ。
「はやくしろお・・やってみろお」
「やれよ・・やれやれれれ」
「れれれーーーー」
そのしつこさに俺は、
「まったく、れれれれ、うるっせーよ!」
「アンタはもう、死・ん・で・る・のっ!」
俺は渾身の捨て台詞を吐き、喋り続けようとする死人を丸っと無視して部屋を出た。
リビングのドアを閉めると同時に、ドアの奥でドサッと人が倒れる音がした。
「ああ面倒臭いババァだったぜ。」
依頼はもう少し調査選別が必要だと思った。死んだ事にも気づかない鈍感な奴が、一番たちが悪い。
どうよ、これが忘れられない”殺しの案件暫定一位”だ。
あくまでも暫定だけどな。(終)
最初のコメントを投稿しよう!