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その日の夕方、放課後である。
それとなく、木嶋先生との話に出ていた旧校舎を訪れたのは。
今では全く使われておらず――生徒のたまり場にならないよう、立ち入り禁止となっている旧校舎。その図書室を一目、覗いてみようと思ったのは。
床は板張りで、まさに"旧校舎"。お約束のようにギシギシと鴬張りになっていないのは、なんとも趣もなにも感じられないけれど、それでも自分の通っていた高校と同じ匂いを微かに感じる。
部屋の名前が書かれたプレートを眺めながら、一階の廊下を真っ直ぐ進んでいくと――二階へと上がる階段の更に向こう、廊下の突き当りに見える“図書室”の文字。
「――あった」
扉についた窓は暗幕によって塞がれ、中の様子はこちらからでは分からない。鍵が開いてなければ諦めて帰ろうか、そんなことを思いながら扉の取っ手に手をかけた時だった。
――ぺらり。
「…………?」
紙を捲る音が、聞こえた気がした。
生徒が立ち入り禁止となっている、この旧校舎で。本もあらかた移動されたという、図書室の中で。誰かが本を読んでいる、その音がした。
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