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「――――」
別にバレたところで困ることもないけれど。息を潜めて、中の様子を窺うように聞き耳を立てる。本当に誰かが中で本を読んでいるならば、もう一度ページを捲る音がしてもおかしくはないだろう。
そう考えて、一分、二分。三分経っても聞こえて来ず。
五分経った頃になって、ようやく――ぺらりと紙が捲れる音がした。
……いや、いくら何でも遅すぎないか。
本当に本を読んでいるのだろうか。文字数でも数えているのだろうか。
予想を変わった形で外され、肩透かしを食らいながら。
ここまで警戒する必要がどこにあると、がっくりと肩を落としながら。
僕は静かに扉を開ける。旧校舎の、図書室の、今となっては不可侵であるべきの、誰のものとも言えない聖域の扉を。
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