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桜が満開だった昨日は終わり、私の初めての告白は既に過去になっていた。
私と誠也君は晴れて昨日から付き合っている。そうカップルなの。
(なのに、あいつは・・。)
昨日はカップルらしく、二人で下校かと思いきや、あいつは真っすぐどこかに消えてしまった。恐らく直帰したのだろう、彼は部活に入っていないからいつも放課後は帰るのが早い。
今日こそはカップルらしいことをする、そう朝起きた時から決めた。朝することと言えば、あれしかない。
「あれ、誠也君!偶然だね、良かったら一緒に学校までどう?」
端的に正確に要件を伝える。彼の機嫌を損なわないように。
「ああ、じゃあ一緒に行くか。でも、お前ずっと前から待ってたろ。」
「あ、ばれてた?だって昨日は誠也君、一人で帰っちゃうし。」
「悪い、いつもの癖だ。今日からは帰りも一緒するか?」
「うん!」
喜びが隠せない、何気ない会話なのにクラスメイトだったら出来ない会話を今まさにしているのだ。私の隣にはかっこいい男子、ぶっきらぼうの裏に隠れた優しさが見え隠れする。一年間歩いて来た学校までの上り坂も、今なら疲れを感じないで歩けたり。
(そんなことは最初だけだったけど。)
上り坂を歩いている最中、私たちの間に会話は無かった。だから幸せな気分も落ちて行き、疲れを余計に感じてしまった。
私は昨日の夜から聞こうと思っていた質問を彼に投げかける。言うか迷ったけれど、今の現状を知るために私は二度目の勇気を振り絞る。
「誠也君って、私のことどう思ってる?」
「お前のこと?・・・影の薄いクラスメイト?」
ここまで聞かなければ良かったと後悔する答えがあっただろうか、否、私の人生ではない。
「でも。」
「今は、良く分からない彼女・・だな。」
他人から見ればその変化は、無いに等しいかも知れないけれど。私にとっては、彼がちゃんと彼女と認めてくれていることに感動していた。
校門を過ぎるなり、彼は私との距離を置き始めた。彼が一方的に速足で下駄箱へと歩いて行く。私は彼に追いつこうと走り出そうとすると、彼が振り返ってこう言い出した。
「俺と一緒に居るところ見られたら、クラスでハブられるぞ。」
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