-散り終わるまで後五日-

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 彼と付き合い始めて今日で三日目になる。カップルになってからしたことと言えば、登下校を一緒にすることだけ。休み時間は勿論のこと、一緒に帰ってる時もあまり会話は出来ていない。なぜなら彼があまり話したく無さそうにしているから。かと言って、このままではタイムオーバーになってしまう。  私は三度目の勇気を振り絞って、放課後遊びに誘うことにする。 「坂柳君、ちょっといい?」 「ああ。」  教室の中で彼の名前ではなく苗字を呼ぶ。彼の気遣いもこれで無駄になるかも知れない。だって彼は女子の中では無暗に話しかけないことが決まっていたから。でも私にとって今だけは、この一週間だけは、女子同士の関係よりも彼氏を優先させたい。 「今日なんだけど、カフェでも寄って行かない?」  教室を出て、廊下の窓際でそんな話をする。彼は私からそんな誘いが来るとは思っていなかったのか、少し驚いた顔をしていた。その顔は悩んでいるのか、断る理由を考えているのか。 「一時間くらいなら良いぞ。」 「ありがと!じゃあ、また放課後ね。」  あまりの嬉しさに女子トイレに駆け込んでいく私。その姿を見た違うクラスの女子が引いた目でこちらを見ていた。恐らく凄い変な顔をしていたのだろう、だって今でも鏡に映る私の顔はにやけていたから。 (ばれてない?だいじょうぶ?)  たかがカフェに行くだけなら、仲の良い男女なら行ってもおかしくはないのに、こんなに嬉しい気持ちになるのは彼が好きだからか、それとも。  そして放課後までの時間は何も頭に入らず、授業のノートさえ所々書き写せていない場所があるほどに私は恋に染まっていた。 「誠也君は、ここのカフェ来たことある?」 「いや無いな。」 「彼女とは来なかったんだ?」 「俺の彼女はお前が初めてだよ。」 「え。」  頼んだカフェモカを口に含むと甘い味がした。彼の突然の告白に私は自分の仮面が外れかけていることに気付いていなかった。演じていた私ではない言葉。 「私と付き合って良かったの?」  そんな本心を彼にぶつけていた時には、既に遅くて、目の前に座っていたのに急に立ち上がってしまった。  ああ、私は失敗したんだ。カフェモカをまた一口飲むと、今度は味がしなかった。  初めての彼女ならば、たとえ彼にとって遊びだとしても、忘れられないようにしたい。  そう心に決めた。
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