勝ち負けの向こう側

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勝ち負けの向こう側

 その日は小さな小説コンテストの結果発表日だった。  腕試しに、と出してみた私だけれど、何だか入賞してしまった。  いや、何だかって表現はおかしいか。  凄く頑張って書いたし、うん、嬉しい。報われた。  ただ、まだ実感が無いんだよね。  ささやかながら賞金が出るらしいので、そこだけは素直に喜べた。  なぜならばチャンスが巡ってきたからだ。  大学で入っている文芸サークルの代表、篠崎先輩をご飯に誘うチャンスだ。  コンテスト用の作品を書いているとき、先輩には励まして貰ったし、相談にも乗って貰った。  お礼に食事に誘うなんて、実に自然だ。    先輩のおかげです……。  いやいや、君が頑張ったからだよ。凄いね。素敵だよ。  嬉しい、ありがとうございます。  おいおい、春、来ちゃいますか?  大学に向かう足取りも軽くなろうってもんですよ。  いつもなら二限目に出てからサークルに顔を出すのだが、この日は休講だった。  なる程、一刻も早くサークルに行きなさいって事ね。  何だか世界に背中を押して貰っちゃっている気分。
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