小さな箱

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小さな箱

 手のひらサイズの小さな箱を、姉はいつも大切に傍に置いている。 ことあるごとに姉は箱を開けて、空っぽの中身を愛しそうに眺めては人差し指でその箱の中の空をなぞるのだ。食事中も、お風呂にだって、姉は肌身離さずその箱を傍に置いている。  他者から見れば何の変哲もないただの箱。   目の下に隈をつくって夜中に一人、その箱を眺め、指先でいじる姉を見た。まるでその箱に魂を喰われているみたいだと私は怯えていた。  その恐怖を知って数日または数ヶ月、数年が経ったある日。私の傍にもその箱は現れた。  その頃には私はその箱の存在に慣れており大人に近づけたと胸弾ませていたが、隈をつくり箱を愛でる姉の姿が浮かんで頭から離れなかった。  ああはなりたくない。   胸弾ませていた先程と打って変わってその箱を疎ましく見る私。しかし好奇心に負けて箱をあけてしまう。  箱の中は空っぽで、私は指先を空をなぞるように振ってみた。   なんだか癖になりそうな感じがした。暇つぶしにはもってこいのような、ニ、三度指先でいじっただけでふと気がついて時計を見ると数時間も経っていた。  私は怖くなってすぐに箱を閉めた。    私には魔法の箱なんかではなく、呪いの箱に見えたのだ。
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