春の海、ひねもすのたらず

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 本日は土曜日なり。  好きな言葉は休日、嫌いな言葉は赤信号である私にとって、わざわざ三十分も車を走らせて会社に参上しなくても良い上、プラス一日のお休みが後に控えておられる最高の曜日なのだ。  早朝、一瞬だけ起きてモコにミルクを飲ませた後、再び布団に潜り込み、ひたすら惰眠を貪る私であった。  世の中に 寝るほど楽は なかりけり  時折、少し開けた窓から入ってきては、優しく頬を撫でていく春の風。このまま永遠の眠りに就いても構わないとすら思える心地良さだ。  いや、いかんいかん。私には愛しき娘がいるのだ。まだ三途の川を渡るわけにはいかぬ。
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