春の海、ひねもすのたらず

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 そして試合はそのままサクサクと進行、完全無抵抗主義のガンジー打線は何の見せ場も作ることなく、九回ツーアウト。  俊介選手の平凡なゴロがセカンドの前に転がったのを見て、私は手に持って構えていたリモコンの電源ボタンを押した。  試合終了の瞬間を見ていないので、負けたことにはならない。負けてないということは、すなわち実質的には勝ったと言っても過言ではないはずだ。  ……などと訳の分からない論理を振りかざしてみても、ただただ虚しいだけであった。  せっかくの休日に、なんちゅう試合を見せてくれとるんじゃああああああっ……!  あまりにも不甲斐ない阪神打線に、回を追うごとにイライラのマグマが沸騰、怒りに任せて飲み干したサッポロ黒ラベル350缶は六本を数え、最早ドロドロの酩酊状態に陥っていた私。  夕方からは防波堤に突撃する予定であったが、こんなんじゃ海へ転落するの不可避説である。  というわけで、本日の釣行は見送り。アジのタタキはお預け。  それもこれも、全部阪神のせいなんだからね!  既にダメになった人間を更にダメにするクッションに倒れ込み、このままフテ寝することに決めた私であった。  パトラッシュ、僕は眠いんだ……。  明日こそは頼むよタイガース……。
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