一枚の写真

兄と私

翌朝目を覚ます。

一階のリビングが騒々しい。

兄の声？

布団をはねのけ起き上がり急いで階段を降り、途中で立ち止まる、リビングの様子をうかがう。

やはり兄がいる。

大学を出て仕事もせずにぶらぶらしていて父に怒られ家を飛び出した兄が帰って来た。

いつも通りにお母さんと話をしている。そこへガチャとドアを開け、父が起きてきた。

「あっ、父さんおはよう、おれ今日からハローワーク行くわ。そろそろ真剣に仕事探さんとな」

父が眠そうにふっと笑い、顔を洗いにリビングを出て行った。

ゆっくり私がリビングに入ると

「よう、おはよー」

と 兄が私に向かって叫ぶ。

「どこ行ってたの？」

「ばぁちゃん家」

やっぱり…

それからはいつもの朝の風景、朝は口数が少ない父、喋りまくる兄、せわしなく支度をするお母さん、そしてゆっくり朝ごはんを食べる私。

身支度を済ませ、玄関に出た時、お母さんが見送りに来た。

「よかったね。お兄ちゃん帰って来て」

お母さんに言われ、私は素直に喜ぶのが恥ずかしく

「ハ、ハハハ」と変な笑いでごまかして家を出た。

どこからともなく降って来た桜の花びらが道に舞っていた。