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頬に触れる手に甘えるように顔を摺り寄せてしまっている時点で全て負けなのだ。それでも、視線は合わせぬよう、自分の膝あたりを見るけれど。
「まだ意地悪していない」
「ふっ、」
そんな天宮の視線を掬い上げるかのように、首を曲げて下から口付けてくる宇津保。けれどそれは触れるだけの口付けで。すぐに離れてしまった彼に不安を抱いて視線あげれば、そこには悪戯に成功したように笑う彼の顔が。
やられた! と思えたのも一瞬だけ。視線を交ぜ合わせたまま唇と唇が触れ合った。
「んっ、んン」
何度も角度を変え、食むように口付けてくる宇津保に天宮は返すことも逃げることも出来ない。
ただ顔を真っ赤に染めて固まったまま、視線と口付けを受け止める。
途中、彼の舌が閉じた唇を這っていき、この扉を開けて欲しいとノックをする。
白くぼやけそうな視界で、彼の視線からの言葉を読み取れば「もっと優奏を感じたい」という笑みで。
(これ以上は無理っ!)
そう視線で返すと、口付けながらも頬を撫でていた手が耳へと移動し、親指で耳朶の裏に触れたかと思えば、人差し指が耳の内側へと潜り込んでくる。
「ふあっ?!」
いきなりのそれに天宮が驚きビクンと身体を震わせる。
「ちょっ、んンっ」
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