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〝サヨナラ、柏原さん〟
分かってはいたけれど、やっぱり誰にも「またね」とは言われなくて、車の中で少しだけ泣いた。
別に誰が悪いわけじゃない。憎いわけでもない。ただ、私に魅力が無かっただけ。ただ私が、誰からも〝距離が離れてもずっと友達でいたい〟と思えるような人間じゃなかっただけ。
儀式として書かれた寄せ書きは、直視できないままそっと段ボールに閉じ込めた。具体的なエピソードの無い、「今までありがとう」「向こうに行っても元気でね」のメッセージが私を攻撃してくるかもしれないと思ったから。もらったガーベラの花束は大事にダイニングテーブルに飾っておいたけど、何故か三日程で枯れてしまった。
……私の数日前のサヨナラは、そんな感じ。
「……ねえ。明日世界が滅亡するとしたら、どうする?」
不意に空から落ちてきたその質問に、私は振り返った。
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