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そこにあるのは、コンクリートと青い空に包まれた不思議な世界だった。前の学校では屋上は立入禁止だったから、初めての光景、初めての開放感。私だけの空間を見つけたと思って嬉しかったのに。
誰か、いるの?
そう思って見渡すと、私が入ってきた屋上の入り口――塔屋の上から、うつ伏せの柚木さんがひょっこりと顔を覗かせた。それを見て、私は混乱する。
何故彼女がここにいるのか。
そして何故彼女は、彼女らしくもない、そんな非現実的な質問をするのか。
……いや。
〝彼女らしくもない〟って、私は何様なのだろう。
「ねえ、どうする?」
柚木さんの声が、催促するようにもう一度落ちてくる。私は慌ててその答えを探した。
「え? えっと……とりあえず、おいしいもの食べる、かな」
彼女は私の返しに、にんまりと笑う。
「いいね、それ」
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